愛する人。




 突然口を開いた男に目を丸くしていると、不意に男は笑顔になり、


「僕、数学得意なんだ。教えてあげようか?」


 なんて。

 俺の返事を待たずに隣の空いてる席に腰掛けた、見知らぬお兄さん。
 俺が目を見開いていると、にっこり笑った。

 俺はその様子に、なぜか顔が赤くなってしまい俯くと、慌てて呼吸を整えた。



 透き通るような白い肌に、茶色のサラサラの髪。切れ長目だけど、優しい眼差しの大学生のお兄ちゃん。

 それからすぐに仲良くなり、ちょくちょく会うようになってからは、この場所で宿題を教えてもらうのが日課になった。



 彼の名は、木村 裕太。

 去年入った大学は長引く入院生活のために辞めるらしい。





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