愛する人。





 なんとなく、さっきの女性の事が聞けない。


 普通に『彼女?』と聞けばいいのに。



 その言葉がのどの奥につかえていたのすら、俺は気付かないフリをした。




「蓮くんはさ、将来の事とか考えてるの?」


 宿題を終えてお互い好きなジュースを飲みながらロビーから続く談話室のソファーに座っていた。



 将来の、夢か…。




「……俺の両親と兄さんは医者だけど、俺は医者じゃなくて違う仕事をしたいんだ」



 まだ誰にも話した事のない話を、なぜ裕太にぃには素直に話せたのか。



 裕太にぃは大人特有の押し付けがましい説教をせず、ただ、俺自身の言葉を聞いた上で、最後にいつものようにふわりと笑い、頑張れよと言ってくれた。




< 259 / 440 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop