愛する人。





 それから、知らないうちに電話を切っていたらしい俺は、やはり着信音で目が覚めた。



「……はい」

『蓮か?』



 俺を呼ぶその声を聞いて、飛び起きた。



「櫂兄さんっ?」


『久しぶりだなぁ!

 この間、家に彼女連れてきたんだろ?

 俺も会いたかったけど、母さんが自分が会いたいからって仕事全部俺に回してきてさ。おかげで病院から一歩も出れなかったんだ』



 優しい口調でゆっくり話す兄さん。

 数ヶ月ぶりの兄の声に、俺はホッとしていた。





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