亡國の孤城 『心の色』(外伝)
そうやって数分間、少年ジスカにとっては恐怖でしかない逃亡劇を繰り広げていたが…バレンはとうとう彼を見失った。
「ジスカ君―?」と呟きながらキョロキョロと辺りを見回し、徘徊する姿は、端から見れば何でもないが、ジスカからすればホラー映画のワンシーンだ。
他の兵士達が通り過ぎて行く中、背後から誰かが声を掛けてきた。
「バレン隊長、如何なされましたか」
キビキビとした落ち着いた物言いだが、明らかに幼く、甲高い声。
……振り返るとそこには………………これまた幼い少女が一人。
灰色の軍服をビシッと着こなし、その辺の兵士とは比べ物にならない位の鋭い眼光を放つ小さな女の子。
その姿と態度のギャップに苦笑しつつ、バレンは少女に向き直った。
「お、トウェイン……ちょうどいいや。………………ジスカ知らねぇ?」
「あちらの柱の後ろに隠れるのを見ました」
トウェインは慈悲も何も無く、すんなりと可哀相な親友の居所を教えた。
彼女が指差した柱の裏から、弾かれた様にジスカが飛び出してきた。
「トウェイン!!てめぇ…!………少しは躊躇うとか何とかしたらどうだ!!薄情女!!悪夢め!!」
「何故だ。隊長殿が尋ねられた事には、必ず答える義務がある」
「お前と俺の友情ってそんなもんか!?」
「義務に私情を挟む必要は無い」
仲が良いのか何なのかよく分からないトウェインとジスカ。
若い子供同士、仲は良いのだろうが、少年は何かと少女に振り回されている。
そして不幸な事に、少女には悪気というものが一切無い、ピュアそのものだ。