亡國の孤城 『心の色』(外伝)
撫でられたイブはじっとバレンを見据え、嬉しそうにこくこくと頷いた。
「…さて、トウェインの所まで連れてってやるよ。ちゃんとついてきな」
煙管を咥え、ぶらぶらと歩き出すバレンの後ろを、イブはやや距離を置いてついて行った。
―――昼過ぎだっただろうか。
偵察に行っていた部下の一人が、殺されたとの報せが入った。
国家騎士団に見つかり、公開処刑の様に無惨な死に方をしたらしい。
その殺し方から、あちら側の恨みつらみがどれ程深いものか…よく分かる。
………国家騎士団の総団長は、今は確か貴族の子供だ。
ゴーガンが殺し損ねたとか何とか聞いたが………。
………………そんな小さな子供が、最大の障害物になろうとは…。
(…………………成人にもなってねぇ総大将のお子様が………よくやる………)
「………………如何しました?………手が止まってますけど……」
ボールの中の生地を混ぜる手が止まったまま一向に動かないバレンに気付き、テーブルの向かいに座って見ていたマリアが声を掛けてきた。
バレンはぼんやりと、交ざりきっていない生地を見詰め………溜め息を吐いた。
「………ん―…………………砂糖入れたっけー?…って、思い出してんだよ…」
「………え…味の無いケーキですか……?」
あらやだ…と困り顔で首を傾げるマリア。
この塔にも、一応キッチンらしいキッチンはある。しかし、だいぶ使われていない。
元々料理が好きなバレンは、たまにこうやって地下のキッチンに行き、たった独りでクッキングをしていたりする。