亡國の孤城 『心の色』(外伝)

何故かあらゆるレシピを知り尽くしているバレンの料理は、結構本格的だ。
近頃では菓子作りがマイブームで、三日に一回は見事なケーキのワンホールを作り上げる。
そして全て、独りで平らげてしまう。


………バレンは決して、太らない。






そんな暇を弄ぶ様な事をしていると、いつからか………突然入隊してきたマリアが、見学しに来る様になった。
いつ、誰から情報を聞き付けたのか不明だが………とにかく彼女は飽きずにやって来る。
出来上がったものを二人で消化する。



………そして今も、彼女はテーブルの向かい側でウキウキしながら見学しているのだ。
ここでの二人は上司と部下ではなく………まるで、調理実習の先生と生徒という感じだ。



「…多分、砂糖は入れた、筈だ。……よーしマリアっち、スコーンの作り方は覚えてきたか―?」

「はーい。資料室でレシピを見付けたので、ばっちり覚えてきました―」

「ん―、よろしい。今日はケーキだが次はスコーンを作るからな。ミルフィーユやショコラの作り方も予習しておくように―」

「はーい」



ほのぼのとした家庭科の授業。
型に生地を流し込み、煉瓦造りの窯の熱の具合を確かめ、煮えたぎる熱い穴に放り込んだ。



……スポンジが出来上がるまでの間は別の作業だ。











「………卵がもうあと少ししか無いな……。………調達しに行かねぇと…」

その辺の壁に寄り掛かり、懐から煙管を取り出した。先の方に詰めた煙草に本の少し触れた途端、何処からともなく、小さな火が点いた。

中など見えないのに窯をじっと見詰めるマリアが、バレンに振り返った。



「…何処から調達するんですか?」


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