亡國の孤城 『心の色』(外伝)
バレンの腕から逃れようと足掻いていたグラッゾも、もうどうでもよくなったのか、始終苦笑を浮かべていた。
無言無表情のクライブも………彼にしてはかなり珍しい事だが、ご機嫌なバレンを見て、一瞬笑みを浮かべた。
『……………ふん…。……………しっかり働いてもらうぞ………』
…バレンは、窓の外から入り込む陽光を見詰め、その先を見据えた。
高い高い、太陽が見下ろしている。
『給料を上げてくれるなら、考えてもいいぜ?』
(………)
重い瞼を開けると、丸めた羊皮紙で叩こうと構えたグラッゾが見えた。
グラッゾは笑顔で舌打ちをした。
「………起きましたか。残念。…………………軍議中に居眠りは厳禁ですよ、バレン」
バレンは寝ぼけ眼で瞬きを繰り返し、だらけた姿勢を正して足を組んだ。
「…瞑想」
「いびきをかく瞑想なんかありませんよ」
ピシャリと言い放ち、グラッゾは椅子に座り直した。
呆れ顔のゴーガンと羊皮紙を捲るベルトーク、そしてクライブを前に、大きな欠伸をした。
「………昨日遅かったんだよ………睡眠時間足りなくてさ。………………調子に乗ってマリアっちが色々と注文つけてきたからな…」
「………貴方、部下と何をしているんですか…。…………リンクス、羊皮紙を握り潰さないで下さい」
マリアっち、とかいう単語が出た途端、ベルトークは捲っていた羊皮紙をグシャリと握った。
心なしか、顔色が悪い。