亡國の孤城 『心の色』(外伝)
軍議が終わり、クライブ、ベルトーク、ゴーガンが退室した後。
羊皮紙の束を揃え、グラッゾも席を立とうとした途端………眉間を押さえてぼんやりとしていたバレンが、不意に口を開いた。
「近頃………よく夢を見るよ…」
「…夢?…ハハハ…貴方の夢はいつでも楽しいでしょうね。うるさいくらいに」
余計な台詞を加えたグラッゾの言葉に苦笑し、バレンは煙管を指先でクルクルと回した。
「………ああ。楽しい楽しい………楽しかった、セピア色の夢さ………」
ピタリと回転を止めた煙管。
…バレンは煙管の先に煙草を詰めた後、空いている手の人差し指をじっと見詰めた。
―――瞬間、火種など何処にも無いのに、バレンの見詰める指先に、真っ赤な炎が点った。
人差し指の先で小さく燃える炎。
それをそのまま詰めた煙草に当て、火を移した。
軽く手を振ると、指先の火はあっという間に消えた。
「…なぁ、グラッゾ」
…いつものバレンらしくない、静かな低い声音。
そんな小さな異変に直ぐ気が付きながらも、グラッゾは人の良さそうな微笑を向けた。
「……何ですか?」
煙草の臭いが嫌いなグラッゾを気遣って反対側に煙を吐き、少し上体を屈めて頬杖を突いた。
「………お姫様はどんな感じだ?………だいぶ兵士らしくなってきたか?」
「…トウェインのことですか?……兵士らしくというよりも、あの子はもう一人前の兵士ですよ。訓練だけで、実戦には出していませんが。………“闇溶け”をマスターするのも、そう遠くない…」
「……………へ―………本の少し前までは………可愛いお姫様だったってのに。………クライブに似てきたな」