亡國の孤城 『心の色』(外伝)
小刻みに肩を震わせ、バレンは微かに声を漏らして笑った。
「………ハハッ…………駄目だなぁ、クライブ………そんなだからあんたは駄目なんだ…………野暮な質問だぜ?……………そういうのはな………」
……小さく揺れ動く赤い髪の間から、カッと見開かれた鋭利に光る瞳が覗いた。
「………お楽しみに、とっておくものだぜ……?……………ハハッ……」
ユラリと前に構えた一本の剣。
もう一方の手で咥えていた煙管を取り、構えた刀身に向かって柔らかな煙を吹き掛けた。
形の無い、宙を舞う白い煙は冷たい剣の光を覆い………。
―――次の瞬間、銀の刃に、鮮やかな赤と明かりを放つ炎が宿った。
暗闇が充満していた空間が、サアッ…と薄明かりを迎い入れた。
刀身が燃える剣に、もう一方の剣と重ねると、炎は燃え移り、二本の細い火柱が生まれた。
………燃える二本の剣をゆっくりと構えるバレン。
明かりに照らされた彼の表情は………戦場でしか見る事が出来ない、もう一つの………彼の顔だった。
「………………焔刃のバレン………久々に見るな。………………向かい合ったのは、初めてだ………」
燃える火柱を構える姿からしても、焔刃そのものだが………。
………バレンの切り込んだ跡は、焼け跡と焦げ臭い異臭しか残らない。
彼に切られた獲物は、何もかも、残らないのだ。
この時の彼は狂人。
人の良い笑みで斬り殺して行くグラッゾと、何処か似ている。
………切るのが、楽しくて仕方無い。………そんな、顔だ。