亡國の孤城 『心の色』(外伝)
―――ブンッ、と………俯せ状態のバレンの眼前に、弧を描く古代文字の群れが現れた。
………魔方陣だ。
バレンの長身をすっぽりと囲ってしまった、巨大な黒い魔方陣。
それは凄まじい引力を持っているのか、押さえ付けていたクライブが離れても、バレンはその体勢から指一本動かす事が出来なかった。
「………………貴様の炎………そろそろ、消してやろう………」
クライブはそう呟き、足元で横たわるバレンに向かって手を伸ばした。
…途端、バレンの下の魔方陣が淡い光を放ち始め………。
バレンは、苦しげに呻いた。
「…………っ…………うっ……………あ………」
………おかしい。
身体が、何か…おかしい。
………力が、無くなっていく。
………指先から…徐々に体温が……無くなっていく。
………呼吸が……上手く出来ない。
……目が霞む。
…耳鳴りがする。
………………吸われている。
………食われている。
生命力を。
命の、灯火を。
「………ちっ………このっ…!…………あ…………う………っ……」
………抵抗する気力さえ、失せてきた。
こんな穏やかで、生々しい死に方…………………冗談じゃねぇ……。
脇に転がる剣を掴もうと指を動かすが、爪の先さえ微動だにしない。
肌の色も、青白くなってきていた。
………駄目…か。
下らない過去の走馬灯が見えてきたら、もうお終いだ。
…お終い、だ。