亡國の孤城 『心の色』(外伝)
そんな、少年を苛めている様にしか見えないリネットの背後で、溜め息混じりの声が一つ。
「…………なぁ、リネット。………………いたいけな求婚者にバンジージャンプを要求するのは、どうかと思う。………そして、なんで俺らまで傍観しないといけないんだ?………これじゃあまるで公開処刑だ……」
大の男嫌いのリネットに求婚してしまった、哀れな少年に、哀れなまなざしを送りながら、オーウェンは言った。
その言葉にリネットは眉をひそめ、広げていた扇をパチン、と閉じた。
「……………公開処刑?………人聞きの悪い台詞ですこと。………………キーツ、貴方が見るべきものは壁ではありませんことよ。…刮目しなさいな」
壁に寄り掛かってかったるそうにしているオーウェンの隣りで、後ろを向いていたキーツはビクリと肩を震わせた。
………怯える小動物の様に恐る恐るリネットの方に振り返り、この公開処刑を傍観し始めた。
「…………あの………リネット………この高さからのバンジーは………ちょっと止めた方が………………可哀相だし…」
「ならば貴方が跳ぶ?」
「良いね、バンジー。この高さ最高」
滝の様な冷や汗を流した作り笑顔で、キーツは急に態度を変えた。
「……小心」、と嘲笑した後、リネットは少年に向き直った。
「………さあ……サレバン男爵家の御長男、ケイニー様。…………………いつまでそこに立ってぷるぷるしている気ですの?…滑稽ですわねぇ!ホホホホホ…………………………………早くおし…」