亡國の孤城 『心の色』(外伝)
…凄まじい威圧感が、ドッとこの場に腰を下ろした。
…もはや跳ぶしかなさそうな哀れな少年は、助けを求めるかの様にリネットの背後に佇む二人を震える眼球で見詰める。
………この貴族である男三人が会ったのは今日が初めて。
特に親しい間柄ではないが、こんな時でしか生まれない一種の友情に似たものがあったり、無かったり。
…その必死の視線に、オーウェンは我関せずと無情にも顔を背け、脇にぶら下がるカーテンの柄を観賞している。
今度はその視線が、キーツに向けられた。
…バチッと視線が合ってしまったキーツ。
オーウェンの様に、平気で他人を見捨てられない……悪く言えば世渡り上手とは言えないキーツは、案の定固まってしまった。
(………)
少年からの無言の圧迫を受けながら、どうする事も出来ずに冷や汗を流すキーツ。
彼の胸の内では、罪悪感とか焦燥感とかその他諸々が手を組んでいた。
…ああ。耐えられない。
………逃げ出したくて仕方無い。
とにかく泣きそうになってきたキーツはぷるぷると震えていた。
……が。
「キーツ、何をなさっているの?」
………と、聞き慣れているが何度聞いても飽きない可愛らしい声と共に、小さな両手の平が背後からキーツの両目を覆った。
「誰でしょう―?」とクスクス笑いながら背後に立つ小さなローアン。
………故意にではないだろうが、この地獄から視界を隠してくれたローアンに、キーツは改めて、「ああ、天使だ」と思った。