亡國の孤城 『心の色』(外伝)
無慈悲にも無視を決め込んだ二人の正面で、処刑は進行されていく。
往生際が悪い事に、魔王リネットに説得を試みようとする少年は、聡明な頭をフル回転させる。
「………リ…リネット…姫………………僕は…女王陛下への初めての謁見で、入城を許された日………貴女を階下から見つけました……あの……」
「まあ、よく喋る殿方だこと。あと五秒だけ時間を与えましょう」
「初めて御会いした、時から……」
「5」
「いえ!!だから!!こんな事をしなくとも僕は本当に貴女の事を……!」
「4」
悪魔のカンウトダウン。
尚も必死に叫ぶ少年を睨むリネット。だが不意にその鋭い視線はバンジージャンプの紐にちらりと移り………………リネットは、懐から………………何だか何でも切れそうなナイフを取り出した。
「3」
…………と、言った瞬間。
たった今までベランダでわーわー喚いていた筈の少年の姿が、忽然と消えていた。
あるのは物寂しく吹き抜けていく春の暖かい風と、何かに引っ張られてシュルシュルシュル……と物凄い速さで伸びていくバンジージャンプの紐。
数秒後にはその紐はピンと張り詰め、ギシギシと音を立てていた。
「………………与えられた五秒も………奴には耐えられなかったか…」
…フッ、と苦笑を浮かべて部屋から出ていくオーウェン。
………残り二秒も待てずに、悲鳴も何も無く飛び下りた少年は、遥か下方の空中でブラブラと揺れていた。
…死んでしまった様に動かない。