誠姫
涙を見られまいと必死で拭うが、遅かった。
「帰るとこねえんだろ?仕方ねえから帰れるまでここにいろ」
そんな言葉に姫芽は唇を噛み締め、全力で睨んだ。
「お前な、幹部総出で女探しなんて普通しねえんだぞ。ほら、見てみろ」
無理やり振り返らせられ、後ろにいる隊士達が広く視界に入った。
「俺の部屋貸してやっから!」
「ばーか。新八の部屋なんか誰が使うか」
永倉のふざけた台詞に、原田の毒の入ったツッコミ。
姫芽はふてくされたように下を向いた。
「よし、帰るか」
その言葉と共にポンと姫芽の頭に土方の大きな手が乗る。
だが、姫芽はそれを右手で払った。
「触るな男」
悠以外の男には殆ど触られたことがない姫芽には抵抗があったのだ。
「てめっ女禁の屯所にわざわざ置いてやるっつってんだ。礼の一つも言えねーのか」