使者の黙示録
団司が部屋を出るとき、なによりもルゼの安否を気にかけていたのだが

いまの団司は、そんなことなど綺麗さっぱり忘れている。


まだ、まともに声を出せないルゼを前にして

団司は右手の人差し指を上に向けて、彼女に尋ねた。


「君にも、あれが見えるよね。何だと思う?」


団司の言葉に、頭上を見あげたルゼは

その目を大きく見開き、息をのむ。


(こ、これは!?)


走り回って体温が上昇し、熱くなっているその身体に

ゾクッと、血も凍るような悪寒が走り抜ける。


(なんということだ!)


絶望の想いが、ルゼの心を支配する。

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