ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
そいつは車の尻(ケツ)側からこちらに回り込もうとしていた。



チャリ――


わざと車のキーを手放せば、コンクリートの上でそれは金属音を鳴らした。



拾うふりをして身体を屈めてヤツの死角に身を潜める。

そのままボンネットに沿って、乃亜がいる助手席側へ全速力で移動した。



ドアをそっと慎重に、だが素早く開けると、驚いた乃亜の身体が跳ねた。


振り返るようにして俺を見下ろす乃亜に向かって、すかさず人差し指を自分の口に当てた。



しゃがんだまま、乃亜の左腕を掴んで、降りるよう促し、サービスルームを指差して、そちらへ行くよう伝えた。



そして、立ち上がりざま、助手席のシートに左足を掛け思い切り蹴って、屋根の上にうつ伏せに飛び乗った。


俺がさっきまで居た場所で、目標を見失って動揺している男の側頭に、右足で水平に弧を描いてその脛を叩き込んだ。


男は悲痛な叫びを上げて、給油ノズルのコードの上に横転する。

コードが引っ張られ、ガゴンと大きな音を立てるも、ノズルは給油口にしぶとく引っ掛かっていた。


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