赤い下着の主

 仕事を終えて帰宅しても、道の途中で梶原と会うことはなかった。

 コンビニにもいなかったし、本屋を覗いてもそれらしい人影は見つからなかった。

 部屋のカーテンをそっと開けると、梶原の部屋に明かりが灯っている。

 それを見てホッとした。

 昨日の今頃はこの部屋にいたのに、もう来ることはないのだと思うと寂しさが募ってくる。

 しばらく窓を眺めていたが、いつかのように彼が出てくることもない。

 早く元の生活に戻らなきゃ。

 美奈実はそう自分に言い聞かせ、この窓に何かを期待するのを禁止することにした。

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