首(外道×貴族)【BL】
「っぁ」
ぴく、と腿を揺らし、ものの抜けた感触にルカスは声を上げた。
抜き際に達したキケロの僅かな隙を付き、暴れて地に落ちる。
疲労した身が床に叩きつけられ、無性に痛々しく感じられて、
キケロが慌てて助けようと手を差し出した。
その手首が、ルカスによってがしりと掴れ急に視界が揺れる。
床に引き倒されたらしい、顔を上げた途端に、
今度は顔面を殴られた。
「何・・・ッ」
「出て行け」
低く押し込められた声に、殺気が篭っている。
本気の怒りは時に実力以上の力に繋がった。
「おい・・・」
「今すぐ出て行けと言っているんだ」
「おまえ、後の始末とかあんだろ、
 感情で物言ってんじゃねぇよ、らしくねぇんじゃねぇのか?
 冷静に考えてみろよ、床拭いて喚起して服少し洗って・・・
 色々あんだろ?それをよろよろのおまえがやれんのか」
「・・・やれる」
「やれてもやらせねーって話だ、
 そんくらいの責任は持つぜ」
「・・・手馴れているな」
口端を上げ、笑みを浮かべてみせるルカスの瞳には、
もう理知の光が戻っており、面白くない。
「可愛げねーなおい」
ルカスが自身の身支度を整えている間、
キケロは床の掃除をしていた。
「あー、やべぇ、俺のやっぱ、
 ちょっと汚れ目立つっぽいな・・・、
 洗い行って来るわ」
「ああ」
涼しく、答えたルカスを残し部屋を出る。
手洗い場で蛇口を捻ろうとした時だった。
ダン、と壁を殴る音が響いた。
本来ならここまで届く音ではないのかもしれない。
日の暮れた校舎は静か過ぎた。
そしてルカスには思いのほか余裕がなかったらしい。
キケロの前では感情を顕すまいとして、それでも、
抑えられなかった怒りを物にぶつけたようだった。



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