首(外道×貴族)【BL】
「知り合いと知り合いの交友を応援しただけの人間に、
 酷い言い草だ、つくづく君は失礼な奴だな」
小柄だがどしりと構えた雰囲気で、いくらでも巨大な印象を与えるその男は、
エリックのようにツンとした所はないが静かな目に権威を宿し、
キケロの心を乱すには十分な気品を備えていた。
薄い瞳の色と下がり目が、底の見えぬ不思議な色気のある顔を作った。
ふわふわとした髪質が性格に反映されているよう、柔和に強かだった。
「ルカがどうかしたか?」
じっと、窓辺の憎たらしい横顔、ルカス・フィオーレを観察していたキケロに、
本来の訪ね先であるゴドーは、いつもの能天気な調子で声を掛けて来た。
「えろい顔してんなーと思ってよ」
「あー、まぁ・・・、なんだよ乗り換えんのか?」
「まさか!守備範囲内だって話だ、あんな奴、
 犯して泣かして捨ててやるぜ」
「それ、ルカに言ったら殺されるな」
「殺すだけの腕力があるか?あいつに?肉弾戦なら負ける気がしねぇ!
 おまえがあいつとつるんでんのが不思議でたまらねーわ、俺には」
「おまえルカと相性悪そうだもんなー」
しみじみと発言するゴドーの声に被さり、予鈴が鳴った。
慌てだしたゴドーはどうやら他クラスで教科書を借りる気だったらしい、教室を飛び出した。
(いやいや、そこは諦めろよ!!ってか用あったくせに俺と喋ってんなよ!)
心中で激しく突っ込みを入れてから、キケロはまたルカスに視線を移した。
うつらうつらと揺れている。暖かな日の光の中、気持ちよさそうにまどろんでいた。
自分がここ数日動き回っていたことを知りもしないのであろう平和な顔で、
のろのろと授業の準備を始める姿は少し愛しくさえ思えた。
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