首(外道×貴族)【BL】
「っ・・・」
ごぼ、と音が聞こえ鼻から額に水の掛かったのは、水を飲む後頭部を押されたせいだ。
水飲み場、キケロの悪戯は強烈に成功してしまった。
げほげほと咽るルカスの背を、キケロは舌打って擦ってやる。
こういったキケロの気まぐれな親切は、
ルカスの底に潜む甘えた心を擽った。
「・・・あれから、時計はどうした?」
「捨てた」
反撃と鎮圧と緊張を保ったまま、関係は体系を作ろうとしている。
水飲み場を離れて、二人は傍の壁に寄りかかって並んだ。
合同の体育授業、持久走を終えたルカスの元にキケロは冷かしに来ていた。
「それよりおまえ、走った後やばいな」
「・・・何の話だ?」
「汗とか顔とかがえろいって話だ、授業中に乱れてんじゃねーよ、
 やっぱ淫乱だな、全体的に真っ赤になるし、ぐったりしやがるし」
マラソン大会前最後の体育はもちろん最後の練習をする。
持久力の無いルカスへの嫌がらせかと思う程、ここ数日、
体育は持久走ばかりだった。
「年中発情期か、野蛮人め」
「今度走ってからやるか」
「見上げた変態だ、見習おう、対エリックで」
「あいつは長距離得意だからな」
「・・・残念だ」
クラスの混合する体育の時間に、珍しく、
ゴドーでなくルカスの元に居るキケロを、
キケロの友人らしきグループが見ている。
「・・・今日の放課後を空けておけ」
「あ?」
「時計屋に行く」
「なんだ、弁償してくれんのか?」
「自分のヒステリーの責任くらい、取るさ」
「・・・」
「おまえの好みは知らん、付いて来い、選ばせてやる」
下卑た笑みを浮かべ、喜ぶかと思えたキケロは、
どこか困惑したよう、顔を顰め、睨みを作った。
「・・・いらねーよ、胸糞悪ぃな、
 自分で新調する金ぐらいあるっつーんだよ」
「・・・」
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