首(外道×貴族)【BL】
外道と貴族
「・・・和解した?」
昼の教室の隅で、ゴドーの声は低く響いた。
「ああ」
数人のクラスメイトが周りに居たため、
怒鳴るのを堪え、ゴドーは静かにルカスを睨む。
「ふざけんなよ、昨日だっておまえ、
 あいつにいびられてなかったか?」
「どこをどう見たらそうなる、話をしていただけだ。
 俺達はおまえをこれ以上苦しめたくない、
 だから話し合って仲直りをしたんだ、ゴドー」
「・・・」
願うように待つのは、ゴドーが表情を和らげて微笑む様であり、
その瞬間に出会えればすべて、
これまでのこともこれからのことも、
耐えていけるような気がした。
「安心してくれ、もう何の問題もないんだ」
不安が表に出ないよう、明るいことを考えて笑った。
ゴドーやエリックと仲を深めた頃が、
ルカスの記憶に新しい、幸福な時間だった。
エリックの精神に、ゴドーの生活に、
世話を焼くことが好きで、二人の中に、
自分を見ることがルカスの幸せだった。
気を許せる空間がそこにあった。
「・・・満足か、俺一人蚊帳の外に出して」
だからこそ、ゴドーの冷たい声が肝を冷やし、
ルカスの思考を停止させる。
「棘のある言い方だ、俺はただ、」
「お前等にとって俺は何だ?」
「ゴドー・・・?」
「俺は頭も悪いし、・・・面倒くさい奴かもしんねーけど、
 おまえは俺をもう少し、信頼してくれてると思ってたぜ」
「・・・」
言葉に詰まったルカスに向かって、
ゴドーの、眉間に皺を寄せた皮肉気な笑いが向けられ、
険悪な空気が重い間を作る。
「解決できて良かったな、事後報告ありがとよ」
吐き捨て、読みもしない教科書を取り出し、
ルカスと壁を作ったゴドーの機嫌を、
どうすれば取り戻すことができるのか、
検討が付かず途方に暮れた。
廊下側に目をやればキケロがにやついている。
逃げるよう、ゴドーの前から去り、
キケロの腕を引き人の少ない階段に向かった。
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