首(外道×貴族)【BL】
満面、笑みを浮かべたエリックが部室を後にするのと、
キケロが立ち上がるのは同時だった。
「俺が運べば解決じゃねぇか?これ」
閉じられた部室の戸に忌々しさを感じる前に、
ルカスには性急に危険が迫っていた。
「・・・要らん気は回すな」
「親切心踏みにじんなよ」
道具を人質にされ、ルカスに逃げ道はない。
キケロの促すままに、旧校舎への長い道のりが開けた。
互いの靴音が響くほど静かな放課後の廊下には人影もなく、
ともすればグラウンドや、体育館から届く活動の音が聞こえただろう。
だがその時キケロの耳はほとんど機能を忘れ、
ただ前を行くルカスの肩と首を見つめていた。
本当に大切であり愛すべき人間に、
強気に出ることのできぬキケロであったが、
しかしある程度に好みの人間には、
無情に迫ることが得意であった。
どう組み敷いてやろうか、悲鳴は上げるだろうか、
あの首に何をしてやろうか、肩の発す色気が心地よく胸を鳴らす。
相手が女であればそのまま付き合いを始めることもあり、
男である時は酷く恨まれもした。
誠実に見える謝罪と償いの仕方は知っている。


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