首(外道×貴族)【BL】
話題の主権を巧く握って、ルカスの行動を制約して行く。
「あの、何だ、どこだっけな、最近よく見える・・・、
 星だよ星、ちょっと気になっててさ、
 ここ天井すげーし、暗くなったらわかると思うんだけどよ」
「暗く・・・もう十分暗いが」
「まだちょっと見えねーな」
旧校舎に見回りの来ないことを知っていた。
天文学部が旧部室を使用している関係で、
その顧問が本当は見回る役目だったが丁度出張している。


***


どれほど時がすぎたか、キケロには短く、
ルカスには長く感じた。
ふいに一定に響く足音、近づいて来たかと思うと、戸が程よく開きエリックが顔を出した。
「まさかとは思ったけど、キケロが珍しく親切したんだ?」
部屋に居た顔ぶれに驚いた顔で、
エリックはコメントし、笑った。
「予想外すぎて気味が悪いだろう」
キケロに接する時と違い穏やかな声色、
当て付けのように友好的な調子だった。
「じゃ、もうゴドーは用済みだね!
 良かった、連れてこなくて。
 なんとなく予想してたんだけどね~、
 キケロ割とルカ先輩のこと気に入ってたっぽいし。
 で、俺、これからカルロ達とちょっと御飯食べようと思うんですけど、
 ルカ先輩、来ませんか?」
「時間があればな」
「キケロは?」
「・・・おう、後で気が向けばな、ちょっとこいつに用ある」
「わかった、じゃぁ」
「エリック」
「はい?」
「いや、・・・」
「何ですか?」
「何も」
「お先失礼します」
「ああ」
バタンと、戸の閉まる音、
足音が遠のき、キケロはいよいよ小さく緊張した。
「そろそろ出てっかもな」
天を仰いで、自然な風に話を切り出す。
「どの星だ?」
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