カセットテープ
「だってチャラ崎が女の子に向かって凄腕とか言うんだもん」
 膨れっ面の顔で不貞腐れたように英里が言った。
 心外よね、とも付け加えた。
「だからって、ぶっ飛ばすはないよ。英里ぐらいなもんだよ、女の子でこんなこと言うの。それに――」
 舞結は言葉を切った。そして、一呼吸してチラチラとキョウの顔色を伺いながら言葉を続けた。
「それに、好きな人の前ぐらいは可愛らしい女の子でいたいでしょ、英里だって」
「可愛らしい女の子ねえ……私には性に合わないわね」
 英里は苦笑いを顔に浮かべた。
「おーい! 雑談止めて席に着けよー。帰る前のショート始めるぞ」
 教室に入って来た芝先が大声を出した。教卓の前に行き、生徒達を見る。
「今日はなんと、ちょうど一ヶ月後に文化祭だ! 何を出すのか決まったか!?」
 一番前の席に座る生徒達を芝先が順々に見た。
 反応のない生徒達に芝先は不思議そうな顔をする。すぐに、キョウの列の一番前に座る女子生徒に顔を向けた。
「岬、学級委員長のお前ならなにか知ってるんだろ?」
 内気そうな顔の岬と呼ばれた女子生徒は困ったような表情をした。何か言おうとしたり、止めたりと口を上下に動かしている。
「あ、あの――」
「俺が説明するよ、岬さん」
 言いにくそうにしている岬を見た楢崎が、代わりに立ち上がって申し出た。
 岬はすまなそうに楢崎を見る。
 楢崎が大丈夫という意味を込め、岬にウインクした。された方は勘違いしたらしく、恥ずかしそうに俯く。
 それを気にせず、楢崎が芝先に目を向ける。
「芝先、聞いてくれ」と妙に真剣な表情で言った。
「男子と女子が練りに練り上げたタイトルはなんと、ジャジャン! キャバ組へようこそ!」
 楢崎が声を張り上げて言った。
 芝先は何のことかわからず、首をかしげた。
 女子生徒の大半が、バカバカしいといった表情で聞いている。
「内容というのは女子全員が、おめかしや綺麗な衣装を来てキャバクラのように接待をするというナイスな案なのだ」
 楢崎が説明すると、キョウ以外の男子達がパチパチと拍手しはじめた。よく言った、と思っている男子生徒も中にはいるだろう。
「いやあ、諸君。わかっておられる」
 ウンウンと何度も頷き、楢崎が周りを見回した。

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