カセットテープ
「先輩、あの、その……」
背の低い女子生徒は俯き加減にキョウを見て、言いにくそうに口籠もった。チラチラとキョウの顔を何度も見る。
それを見兼ねた黒く長い髪を背中まで流している女性が二人に近づいた。
「各務くん、その無愛想な顔だと音実さんも言いづらいのよ」
「ち、違います! 里織先輩、私そういうこと思ってません」
小動物を思わせる容姿の音実と呼ばれた女子生徒が、手をブンブン振り誤解なんですと行動で示した。
あらそう、と言いたげな瞳を、高校生とは思えない綺麗な容姿の里織が音実に向ける。
「音実さん、言いたいことがあるならちゃんと言わないと」
「は、はい。あの、各務先輩、私に弓道の指導してくれないでしょうか?」
頭を下げて申し訳なさそうに音実は言った。
横にいる里織の眉がピクッと動く。
キョウは少し考えたあと「ああ、わかった。俺が行くまで近的場で練習しててくれ」と言った。
「はい! ありがとうございます」
音実はうれしそうに返事をした。ペコリとお辞儀して、キョウの前からパタパタと小走りで去っていく。
「後輩のために指導するなんていい先輩ね、各務くんは」
雪瀬里織は整った口元だけで笑って言った。どこか相手の内を探るような瞳をキョウに向ける。
この瞳がキョウは苦手だった。
心を見透かすような探る瞳をキョウを見るたびに向けてきた。何故そういうようなことをしてくるのかは、キョウにはわからない。かといって、弓道部があるたびにこんなことをされるのは、心労的に堪える。
だから、なるべく里織に関わらないように過ごすようにしていたのだった。が、どういう訳か向こうからいつも話し掛けてくるのだ。
キョウは、その度に話をすぐに打ち切ることにしていた。
「俺、練習するから」
「そう、邪魔してごめんね」と、いつものように雪瀬も深く話し掛けようとはしなかった。
背に視線を感じながら和弓を手に取った。
キョウは和弓を携えて近的場に向かった。
近的場は、射手から的まで26メートルあり、直径一尺二寸(36センチ)の的を置く。的場には矢が傷つかないように斜めに土が盛り上がっている、これを安土と呼んでいる。
川凪高校の近的場には、的は五個設置していた。
弓道場には他に遠的場と呼ばれるものがある。
背の低い女子生徒は俯き加減にキョウを見て、言いにくそうに口籠もった。チラチラとキョウの顔を何度も見る。
それを見兼ねた黒く長い髪を背中まで流している女性が二人に近づいた。
「各務くん、その無愛想な顔だと音実さんも言いづらいのよ」
「ち、違います! 里織先輩、私そういうこと思ってません」
小動物を思わせる容姿の音実と呼ばれた女子生徒が、手をブンブン振り誤解なんですと行動で示した。
あらそう、と言いたげな瞳を、高校生とは思えない綺麗な容姿の里織が音実に向ける。
「音実さん、言いたいことがあるならちゃんと言わないと」
「は、はい。あの、各務先輩、私に弓道の指導してくれないでしょうか?」
頭を下げて申し訳なさそうに音実は言った。
横にいる里織の眉がピクッと動く。
キョウは少し考えたあと「ああ、わかった。俺が行くまで近的場で練習しててくれ」と言った。
「はい! ありがとうございます」
音実はうれしそうに返事をした。ペコリとお辞儀して、キョウの前からパタパタと小走りで去っていく。
「後輩のために指導するなんていい先輩ね、各務くんは」
雪瀬里織は整った口元だけで笑って言った。どこか相手の内を探るような瞳をキョウに向ける。
この瞳がキョウは苦手だった。
心を見透かすような探る瞳をキョウを見るたびに向けてきた。何故そういうようなことをしてくるのかは、キョウにはわからない。かといって、弓道部があるたびにこんなことをされるのは、心労的に堪える。
だから、なるべく里織に関わらないように過ごすようにしていたのだった。が、どういう訳か向こうからいつも話し掛けてくるのだ。
キョウは、その度に話をすぐに打ち切ることにしていた。
「俺、練習するから」
「そう、邪魔してごめんね」と、いつものように雪瀬も深く話し掛けようとはしなかった。
背に視線を感じながら和弓を手に取った。
キョウは和弓を携えて近的場に向かった。
近的場は、射手から的まで26メートルあり、直径一尺二寸(36センチ)の的を置く。的場には矢が傷つかないように斜めに土が盛り上がっている、これを安土と呼んでいる。
川凪高校の近的場には、的は五個設置していた。
弓道場には他に遠的場と呼ばれるものがある。