カセットテープ
この遠的場は、射手から的まで60メートルあり、直径1メートルの的を射ることになる。
遠的場は広さ故、どこの学校でも場所を確保できるスペースが全くと言っていいほど無い。
しかし、例外中の例外もあった。
それはここ、川凪高校だ。
川凪高校は進学校の顔を持つ反面、半分以上のクラブが全国区の大会に出場をするため、施設が私立よりも以外に設備されている。弓道場もその中の一つというわけだ。
稀に、土日に弓道場を他学校に貸すこともある。
近的場の射手の位置についたキョウは、静かに的を見据えた。
この時、頭の意識から徐々に音が引いていく感覚が、キョウは好きだった。ただ一点を集中し、他の事を考えずにいられる時間。そして、誰も自分に関与できない時間。
キョウは横向きの態勢になり、肩幅まで足を開いた。弓掛けを右手に装着して和弓を構え、三枚の羽が付いた矢を弓に掛ける。
矢をゆっくりと蓄めるようにして引いていき、張り詰めた弓がしなる。
蓄めた力をすっという風にして右手に持っている矢を放した。
矢は吸い込まれるようにして瞬く間に的の中心に命中する。そして、静かにキョウは腰を下ろして正座した。
これらの一連の動作を部員たちは、息を呑み眺めていたのだった。
「……先輩、今日は一段と凄いですね。そういえば、昨日来なかったですよね、何かあったのですか?」
キョウの隣の射手位置にいる後輩男子が、矢が刺さった的を見ながら惚けたように言った。
「……いや、何もない」
「そうですか」
「………」
キョウは押し黙った。昨日何かあったか、それは確かにキョウにとって信じられないことがあった。
月本晴司の死。それを学校にいたキョウはメールで知らされ、いつのまにか授業を抜け出して葬式に行っていたことだろう。亡くなったことを知らされたのは晴司が他界した翌日。
昨日の今日でキョウも少なからず、いつも通りとはいかなかった。いつもより知らず知らずの内に、弓に力みが入っていた。
キョウは後輩に言われるまでそのことに気付かなかったのだ。
「あ、あの……」
背後から遠慮がちに言われた言葉に、キョウは振り返る。
背後にはツインテールを僅かに揺らしながら音実が、すまなそうにキョウを見ていた。
「練習中すみません」
いきなり頭を下げて謝ってくる。
遠的場は広さ故、どこの学校でも場所を確保できるスペースが全くと言っていいほど無い。
しかし、例外中の例外もあった。
それはここ、川凪高校だ。
川凪高校は進学校の顔を持つ反面、半分以上のクラブが全国区の大会に出場をするため、施設が私立よりも以外に設備されている。弓道場もその中の一つというわけだ。
稀に、土日に弓道場を他学校に貸すこともある。
近的場の射手の位置についたキョウは、静かに的を見据えた。
この時、頭の意識から徐々に音が引いていく感覚が、キョウは好きだった。ただ一点を集中し、他の事を考えずにいられる時間。そして、誰も自分に関与できない時間。
キョウは横向きの態勢になり、肩幅まで足を開いた。弓掛けを右手に装着して和弓を構え、三枚の羽が付いた矢を弓に掛ける。
矢をゆっくりと蓄めるようにして引いていき、張り詰めた弓がしなる。
蓄めた力をすっという風にして右手に持っている矢を放した。
矢は吸い込まれるようにして瞬く間に的の中心に命中する。そして、静かにキョウは腰を下ろして正座した。
これらの一連の動作を部員たちは、息を呑み眺めていたのだった。
「……先輩、今日は一段と凄いですね。そういえば、昨日来なかったですよね、何かあったのですか?」
キョウの隣の射手位置にいる後輩男子が、矢が刺さった的を見ながら惚けたように言った。
「……いや、何もない」
「そうですか」
「………」
キョウは押し黙った。昨日何かあったか、それは確かにキョウにとって信じられないことがあった。
月本晴司の死。それを学校にいたキョウはメールで知らされ、いつのまにか授業を抜け出して葬式に行っていたことだろう。亡くなったことを知らされたのは晴司が他界した翌日。
昨日の今日でキョウも少なからず、いつも通りとはいかなかった。いつもより知らず知らずの内に、弓に力みが入っていた。
キョウは後輩に言われるまでそのことに気付かなかったのだ。
「あ、あの……」
背後から遠慮がちに言われた言葉に、キョウは振り返る。
背後にはツインテールを僅かに揺らしながら音実が、すまなそうにキョウを見ていた。
「練習中すみません」
いきなり頭を下げて謝ってくる。