ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
約束してる訳では無い。気が向いたらそこに出かければ良いと言う暗黙の了解だけ……いつもの席に何時も通りに座って彼女が現れるのを待つ。必ず現れる訳では無いしのぶの事を思いながら、コーヒーを啜る。

「純……」

今日は何時もの時間に彼女は現れた。彼女は純の席の向かい側に座るとウェイターにコーヒーを注文、そしてバッグからメンソールの煙草を取り出して何時も通りに火をつける。

メンソールはしのぶの香りと言う記憶が純の記憶に刷り込まれつつ有った。

「しのぶさん……煙草は何時から吸ってるの?」

純の質問にしのぶは火をつけた煙草の先端をちょっと見詰めてから純にむかってこう切り出した。

「――あ、ごめんね。嫌い?煙草……」
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