空しか、見えない
「あののぞむが、さりげなく荷物とか持ってくれるようになったのには驚いたの」

 赤いコートの千夏が、そう言って肩をすくめる。
 佐千子は、また不愉快になる。
 けれど、千夏の言う通りなら、確かにのぞむは変わったのだ。のぞむといえば、気が利かないぼーっとしたタイプの代表選手だった。みんなで笑っているときも、ひとりだけ遅れて笑い出すようなところがあった。邪気がないというか、ぴりぴりしていないというか、それがのぞむの魅力だった。
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