空しか、見えない
「千夏のせいじゃないよ。のぞむが自分で決めたらよかっただけ」

 佐千子が呟いた。
 フロントガラスの向こうでは、ワイパーが激しく右へ左へと動き、雨粒を弾いている。
 純一は、ハンドルを握りながら続ける。

「そうそう、悪いのはのぞむだね。あのさ、男って、みんな優柔不断なところがあるよ。せっかく帰ってきたんだからさ、許してあげなよ、サセも、さっきからすごい怖い顔してるよ」

 佐千子は、何も答えられなかった。
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