空しか、見えない
「どうしてだろうね。昔一緒に遠泳をしたってだけなんだけどね」

 純一の脳裏にふと義朝の様子が思い浮かび、彼は少しえへらっと笑ってみた。心に柔らかな風が入り込むようだった。
 由乃は、そんな純一の心を見透かすようにこう言った。

「なんか、嫌だな。結婚しても、家族になっても、きっと私はそのメンバーには敵わないんでしょう? そういうの、嫌」

「どうしたの? 由乃」

「純にとって一番大切な人になりたいのに、なれない気がするから」
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