空しか、見えない
純一は少し呆れながら、婚約者の拗ねる顔を見ていた。由乃が大切な相手なのは決まっているが、ハッチの仲間たちとの時間は、特別だった。若い日の彼を象った様々な思いをすべて運んでくる。ピアノが嫌で練習から逃げてばかりいた頃、遠泳にだけ夢中になれたのは奇跡のようだった。誰にだってある若い日の、どこか面映いような思い出だ。
この先、ハッチの仲間たちについて口にするたびに、由乃にこんな顔をされるのでは、憂鬱になる。
「こっちにおいで」
純一は彼女を膝にのせると、両腕の中にそっと抱きしめた。髪の毛から少し汚れた匂いがした。唇を重ねると、由乃は柔らかく解けた。
この先、ハッチの仲間たちについて口にするたびに、由乃にこんな顔をされるのでは、憂鬱になる。
「こっちにおいで」
純一は彼女を膝にのせると、両腕の中にそっと抱きしめた。髪の毛から少し汚れた匂いがした。唇を重ねると、由乃は柔らかく解けた。