空しか、見えない
「はじめまして。どうぞ」

 先ほどのグラスに透明な水が継ぎ足されて、目の前にそっと置かれた。短い爪の先には、透明なマニキュアが清潔に塗られている。
 笑うと頬にえくぼの浮かぶ女性だった。飾り気ない人に見えた。その人の左手の薬指に、銀細工のような指輪がつけられている。
 佐千子の視線に気付いたのか、

「これは、義朝からの最後の贈り物です。皆さんの話は、よく聞かされていました。どうぞゆっくりしていらして下さい」

 小さく会釈をすると、またカウンターの反対側の、先ほどの客の方へと向かっていった。
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