空しか、見えない
「何かお飲みになりますか?」

 機内サービスが始まって、のぞむはジントニックを頼む。プラスチックカップに注がれて運ばれてきたのを飲み干す。エコノミーなら、プラカップ、これより先のシートになっていけば、食器もサービスもすべてが異なる。それをあからさまに教えられるのも、アメリカでの暮らしだった。だから、飛行機はビジネスクラスから、ファーストクラスへ、空港からの帰路は、運転手の出迎えるリムジンタクシーにと、変わっていく人間を目の当たりにする。
 なぜか体が震えて仕方がない。思えばここ数日、ほとんど寝ていない。少し風邪でもひいたろうか。毛布を深くかぶると、のぞむは読書灯の灯りを消した。

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