空しか、見えない
 ルーは、答えてくれるだろうか。
 自分はついに、まるで長年の友人のようにルーとのやり取りを始めてしまったのだ。
 のぞむ本人にではなく、会ったこともない人を相手に心を打ち明け始めた。
 しばらく待っても、返事はなかった。まだニューヨークは、未明の時間のはずだ。
 佐千子は息が詰まりそうに感じ、パソコンを畳む。鞄を肩に、慌ててビルを出ようとすると、編集長とすれ違い、こう言われた。

「おや、野上くん、ずいぶん張り切っているじゃないか。なんか、いいんじゃない? ぱりっとしてさ」

 繊維業界において、ぱりっとしているなんて最高の褒め言葉だ。
 閉まりかけた自動ドアをこじ開けるように、外へ走り出た。

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