空しか、見えない
 百貨店勤めだった義朝には、いろいろノルマがあった。

「布団なら、俺もひと組、買ったぜ」

 環が手を上げる。

「私は、ジュエリーケースを頼まれたかな。悪いけど、使わないから断っちゃったんだけど」

 フーちゃんが肩をすくめる。

「すみません、義朝さん、そんな理由で皆さんとの付き合いを大切にしていたわけじゃないと思うんですけど」

 まゆみが少し困ったように、つけ加えた。

「大丈夫ですよ。もちろん、わかってるから。むしろ、僕らの間では遠慮なんてしないでくれたのがうれしかったよな」

「そうよ、のぞむみたいに何にも言ってくれないのが、一番寂しいわ」

 マリカはそう口にしながら、グラスのふちについたグロスを指で拭う。
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