空しか、見えない
「なんて言いながら、私もみんなの前では格好つけてばかりかな。パリに部屋を買いましたとか、23区のプールだとか。本当はね、いろいろあるの。みんなに愚痴りたいことがいっぱいよ。フランス人なんて、いつでもたっても日本人を小馬鹿にしているし、毎日頭に来てる。それにね、恋愛だって、もう長い間、……正直に言うね。言ってみるなら不倫の関係にはまってる」

 一気に話し始めたマリカを、純一が優しく諭した。

「もういいって。話せば話すだけ辛くなることだってあるんだよ。みんなだって、言わなくたって察することもあるさ。いろんな意味でね。人が素敵になるってそんなことだよ」

 そこまで言って、純一は、あっと小さな声を上げた。

「この曲、義朝が好きだったでしょ?」

 そう言ってまゆみに問いかける。
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