空しか、見えない
佐千子には、ハッチのメンバーから、様々なメールが届く。
フェイスブックなどで情報を共有する方法もあったはずだが、はじめは全員に送られていたメールも、今では佐千子にだけ送られてきて、それを昔の続きで『サセ新聞』に編集してほしいと言うのだ。お世辞半分かもしれないけれど、みんな楽しみにしてくれているらしい。なので、佐千子もまるで仕事がもうひとつ増えたように、週末ごとに、記事を書く。
〈クビになっちゃうかも〉
マリカから届いたメールは、あまりに悲痛で、佐千子はそのまま〈パリから、まさかのメール〉と副題をつけて、コラムにした。
〈パリにアパルトマンまで買った私ですが、このたび不倫が発覚して、会社をクビになってしまうかもしれません。そうしたら、エミレーツ航空だとか、もっとゴージャスなところ、受けてみます。何とか、遠泳のスケジュールは守ります。みんなとの約束を守ります〉
さらに、もう1通、信じられないメールが届いた。