空しか、見えない
 ルーとは一度も、愛や恋を語り合ったことがないし、キスをした覚えもない。時折、外国人同士のハグをしたり、時にはそこに少し慰めや労りの情熱がこもるけれど、それ以上深く触れ合ったりもしていない。
 寝るときにはいつも、おやすみ、と言い合って、必ずそれぞれの寝室へと入る。
 のぞむが入院をしたとき、ルーがサセに勝手にメールを送ったのは、最悪のルール違反だった。ルームシェアを解除しようかとも、真剣に考えた。
 その後も、やけにしつこく、自分を愛しているのかとかいないのかとか聞かれるのにも、辟易した。
 でもルーがのぞむに代わって夜勤に出るようになってからは、忙しいのかそんなやり取りもなくなった。
 代わりのように、ルーは毎日のように写真を撮る。なぜか息子だけではなく、自分の写真も撮ろうとする。
 ルーと息子の写真を撮ってやろうと申し出ても、要らないと断られる。
 ルーが考えていることは、時々よくわからない。だけど、今では誰の目にも、自分たちは家族のように見えるだろう。
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