貧乏お嬢様と執事君!
腹が立ってきた椿野は、運転席のミラーで時たまこっちを窺っているドライバーを睨みつけた。
「まだつかないのかしら」
「すっすみません!なんせ道が混んでて………」
「なるべく早くしてちょうだい」
椿野の冷淡な声音に、ドライバーは暖房が利きすぎているぐらいのリムジン内で体を震わせた。
椿野としては、このストーカー二匹と同じ空気すら吸いたくないというのに。
はぁとイライラしつつ隣の井筒のピカピカに磨かれた靴を、強く踏みつけた。
「うんぎゃ!」
鉛を落とされたような声をあげた井筒をスルーし、カイトは
「お嬢様、車酔いはされておりませんか?」
「うん大丈夫!」
鷹司の心配ばかりしていた。