貧乏お嬢様と執事君!
やがてカイトの夕食を告げる声が聞こえてきた。
ノートに書いていた数式を書きあげ、彼女は居間へと駆け込んだ。
自室にまで流れてきていたカレー臭が鼻腔をくすぐり我慢の限界が近かった。
こんもりを山盛りになったカレー皿に歓喜の声をあげ、鷹司は自席へ滑り込む。
目の前ではカイトが正座し、ぴっしり背筋を伸ばしている。
「いただきまーす」
最初に口をつけるのは鷹司だ。その次にカイトが続く。
一口煽ると微妙にピリッと刺激がきて徐々に甘みが浸透してくる。
こんなユニークなカレーを作れるのはカイトだけなのかもしれない。
いつもなら美味しそうに食べる鷹司を至福の笑顔で見守っているカイトなのだが、今日はまた違った。
食い入るように目の前の皿から目を外さず、何かをこらえているように見えた。
鷹司は静かなカイトを見てスプーンを止めた。