トルコの蕾




おでこからほっぺた、鼻、唇に、ちょんちょんとキスをしながら正樹は笑った。



「絵美ちゃん、俺やっぱり今日は泊まるのよそうか?」



絵美がぱちりと目を開ける。



「明日の朝、迎えに来るよ」



正樹はそう言って立ち上がると、困ったように笑った。





「…嫌だ…」



蚊のなくような声で絵美が言った。



「帰らないで」



「ここにいて。…もう泣かないから…」





セックスが怖かったんじゃない。


比べられるのが怖かった。


他の誰かと、比較されるのが怖かった。


正樹のことが大好きで、世界で一番大好きだから。


自分も、もしできることなら正樹の一番でありたかったのだ。




< 133 / 221 >

この作品をシェア

pagetop