トルコの蕾
「正樹…」
快感の波に薄れゆくはっきりとした意識の中で、自然に彼のことを呼び捨てにしていることに気がついた。
正樹の指が、唇が、全身のあちこちに触れるたびに絵美は知らない世界が開けていくような気がした。
愛されるということは、こういうことなのかもしれないと絵美は思った。
雑誌のセックス特集をいくら読んだって、実際に体験してみなければわからないこと、それは彼の、指先から伝わってくる、愛や温かさ、自分を大切に思ってくれているということ。
セックスするだけの関係には愛がない、とよく言うけれど、そんなことはないのかもしれないと絵美は思った。
好きな人と裸で抱き合うことで、会話を交わすだけでは伝えきれない気持ちを、自然に体温や呼吸や声で表現することができるから。
セックスだけの関係ももしかしたら本当は、何よりも愛に溢れた関係なのかもしれない。
「絵美…、怖くない?」
ため息混じりの声で正樹が言う。
「…怖くないよ?」
絵美がそう答えると、正樹は小さな胸の谷間に顔をうずめ、ゆっくり、ゆっくりと絵美の中に入って来た。