トルコの蕾




自分は太一に甘えているのだ、と真希は思う。



太一の存在がなければ武との今の関係にはとても耐えられないだろう。



武に抱かれていると、いつも涙が溢れそうになる。

武は自分のことを愛していないのだと思い知らされる。




「…タッちゃん…早く来て…」



真希はひとり呟いた。それがわがままだということくらい解っているし、太一のことを利用しているつもりなんてない。太一なら迎えに来てくれるから、というだけの理由で呼んでいる訳でもないし、家までひとりで帰るタクシー代くらい持っている。だけどそうじゃない。



ただ寂しくて虚しくてどうしようもない、こんな夜は、太一に会わずにはいられない。



太一はきっと今日も何も聞かないのだろう。

夜中にホテル街のすぐそばにあるファミレスに呼び出されたからといって、こんな時間にこんな場所で何をしていたかなんて聞かないだろう。



むしろ聞いてくれたらどれだけ楽だろうかと真希は思う。



太一は黙って怒っているのだ。

きっと本当は何もかも知っていて、何も聞かないことで真希を責めているのだ。



こんな関係、早くやめろと太一が言ってくれたら、きっときっぱり武との関係を断ち切ることができるのに。




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