みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


「……チーフがお伝えに?」

グッと答えに詰まった私が伏し目がちに尋ねれば、フッと落ち着き払った一笑が返って来る。


「あの部屋にいたって言ったら?」

「なっ、どこに」

「奥の給湯室って、案外死角だよな」

悠然とした声と態度を前に、体中からサーッと血の気が抜けていく気がした。


「退職届も持って来たけど、受理はしてないよ?田中から“預かった”だけだし」

四面楚歌の状況に何とか笑みを浮かべたつもりが、結局ひくひくと口角が上がっただけ。


「ろ、労働協約違反ですよ!」

「そんな答え求めてない」

真っ直ぐな視線を受けた刹那、柔らかな唇が重なっていた。呆然とする私を捉えたまま、薄墨色の眼が伏せることはない。


羞恥が頬の熱を押し上げ、思わず固く目を閉じてしまった。


どことなく乱暴な触れ合いから逃れようとすれば、片手が私の顎先を掴んで離さない。


「んっ、」

あたたかな感触はリップノイズを立てつつ、私に口を開けと告げている。


奥への侵入だけは避けたいと、必死に拒んでいたのも束の間。

「ひっ、」

背中からお尻にかけ、ツーと妖しい指先になぞられて弛緩する身体。


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