LOVELY☆ドロップ
……どうしようか。
電話ボックスはたしかこの交差点の右に行けばあるはずだが、祈と彼女をふたりだけ残して行くわけにもいかないし……。
だからといって祈に電話してもらうこともできない。
誰か、誰か手を貸してほしい……。
助けを呼ぼうとグルリと周囲を見渡したが、こんな豪雨の中だ。
誰もぼくたちにかまっている暇もない。
人々は足早に通り過ぎていく。
こうなったら仕方ない。
ぼくは決意すると、うずくまった彼女の膝裏に両腕を差し入れる。
彼女を抱えたまま腰を上げれば、思いのほか彼女の体が軽いことに気がつく。
こんなに華奢な体をしているんだ無理もないか……。
そうして叩きつけるような大粒の雨と強い風の中、ぼくは祈と共に、青になった信号機を合図にして、横断歩道を渡った。
――――――。
――――――――――。
「きゃ~!!」
「こら、祈!! いつまでも走ってないで早くこれで体を拭きなさい」
それからぼくは未だ降り続いている豪雨の中、祈を連れて我が家である南向きの6階建てマンション――403号室に帰ってきた。
ぼくは濡れたままの格好で、台所、寝室、子供部屋と元気に走り回る祈を叱りながら、クローゼットからバスタオルを取り出した。
手にしたバスタオルを、ツインテールをほどいた祈の頭にかけてやる。
からからに乾いた柔らかなバスタオルが祈の体にまとわりついていた雨水を吸い取ってくれる。