短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

店主は二人が小声で言い争っているのを見て、「こりゃ明らかに訳ありだな」という確信を持った。

「分かりました、人生色々ありますからねぇ」
店主は引き出しから、一度しまった仕事道具をガサガサ出し始める。


「私もねぇ、女房とは駆け落ちなんですよ」
などと妙に陽気に話しながら電卓を叩きだすと、駆け落ちした訳ではないと否定するよりも先に、二人の前に書類を置いた。

「これらを揃えていただければ、今日からお貸しできますよ」

テーブルに置かれたのは、入居費用の計算書と契約書だった。

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