911の恋迷路

 陵は奥の部屋のドアを開けた。

 六畳ほどの洋室で、稔が慎を責めていたようだ。

 


 ふたり共に、陵と果歩の姿を目にして立ち上がる。


 陵が茶碗を稔に差し出した。

 「……お茶が冷めてしまったから、入れてくれる?」
 
 その場にふさわしくない、空気を読めない発言。

 

 (りょうくん……)

 果歩は陵の背後で驚いていた。
 稔と慎のふたりが言い争いを止め、固まっている。

 

 稔は陵が差し出す茶碗を受け取った。

 慎と稔の間には、陵の黒い携帯電話が置いてある。

 陵はケイタイを見つめているように果歩には見えた。

 

 「りょうくん……」

 (陵くん、本当は覚えているんじゃない?)

< 143 / 232 >

この作品をシェア

pagetop