911の恋迷路
陵は奥の部屋のドアを開けた。
六畳ほどの洋室で、稔が慎を責めていたようだ。
ふたり共に、陵と果歩の姿を目にして立ち上がる。
陵が茶碗を稔に差し出した。
「……お茶が冷めてしまったから、入れてくれる?」
その場にふさわしくない、空気を読めない発言。
(りょうくん……)
果歩は陵の背後で驚いていた。
稔と慎のふたりが言い争いを止め、固まっている。
稔は陵が差し出す茶碗を受け取った。
慎と稔の間には、陵の黒い携帯電話が置いてある。
陵はケイタイを見つめているように果歩には見えた。
「りょうくん……」
(陵くん、本当は覚えているんじゃない?)