911の恋迷路
「稔が遅刻してくれて、なんか俺、でっかい贈り物をもらった気分です」
慎が言ったと同時に、
近くまで来ている、という稔のメールが果歩の携帯に入る。
「予想よりも早く来そうな感じだよ」
限られていると分かっているからこそ、
濃密な幸せを人は味わおうと出来るのかもしれない。
外の人ごみは全く減る気配はない。
池袋の雑踏の中に、稔を見分ける術が果歩にも慎にもない。
外は冷えるのか、寒そうに足早に人々は歩いていく。
でも稔はこちらに向かっている。
確実にふたりで居られる時間は無くなっているのだ。
惜しいと思う瞬間に、その時は来てしまうものらしい。