911の恋迷路

 「稔が遅刻してくれて、なんか俺、でっかい贈り物をもらった気分です」

 慎が言ったと同時に、
 
 近くまで来ている、という稔のメールが果歩の携帯に入る。

 「予想よりも早く来そうな感じだよ」

 

 限られていると分かっているからこそ、

 濃密な幸せを人は味わおうと出来るのかもしれない。

 外の人ごみは全く減る気配はない。
 池袋の雑踏の中に、稔を見分ける術が果歩にも慎にもない。
 外は冷えるのか、寒そうに足早に人々は歩いていく。

 
 でも稔はこちらに向かっている。

 確実にふたりで居られる時間は無くなっているのだ。

 惜しいと思う瞬間に、その時は来てしまうものらしい。

 
< 203 / 232 >

この作品をシェア

pagetop