マスカレード【仮面de企画】
「詮ないのぉ……別の者にするか」

女の人はいかにも渋々といった感じで立ち去った。


「悟なの?」

わたしは覆面の男に呼びかけた。


「そうだよ、クールビューティ」


呆れた


わたしは思わず笑った。


「それ、『仮面』じゃなくて『覆面』じゃない」


「どっちも『マスク』じゃないか。顔が隠れればいいんだろ? それにこれ、伝説のメキシコ人プロレスラーの物なんだぜ。オークションで落としたんだ」


彼、羽竜悟は高校時代からの遊び友達だ。

ちょっとばかりお調子者で、羽竜の血筋がみんなそうであるようにかなりの美形。

難点はゲイだってこと。


「ねえ、今の女の人は誰? 親戚?」


「親戚には違いないんだけどね。人じゃない。竜城神社の乙姫様だよ」


何ですって?

龍神の子孫だという羽竜家の人と付き合いがあると、色々なものを目にするけれど、女神様を見たのは初めてだ。


「じゃあ、わたしは浦島太郎になるところだったの?」


「そういう事。感謝してよね」


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