マスカレード【仮面de企画】
悟ってば、俳優にでもなればよかったのよ


悟はやや大袈裟に、かつ存在感たっぷりに真っ直ぐに歩いた。

着飾った人達が通り道を開ける。


「モーゼだってもう少し控え目に海を渡ったんじゃないかしら?」


「その人、知り合い?」


わたしは思わず声を出して笑った。

「たぶん前世でね」


二つに割れた人の波の向こうに、彼はいた。


あら

想像していたよりずっとステキ


黒のタキシードが細めの体型によく似合っている。

呆気に取られている人々には目もくれず、悟はわたしを連れて柚月さんの前に立った。


「こんばんは、素敵なパーティーですね」


「ありがとう。君は……」


「仮面パーティーで名前を確認するなんて馬鹿げてますよ」


「確かに」

柚月さんの口元が笑みを浮かべた。

「ごきげんよう、お嬢さん」

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